歌集 高遠

歌集 高遠

あとがきより

・・・二十代に辞めた作歌を七十代後半になって再び始めることになりました。
 その直接のきっかけは、阪神淡路大震災の報道でした。「震災と戦争いずれが悲惨ですか。」と問うリポーターに、愛新覚羅浩さんが、「震災は助け合いがございます。戦争はただ憎み合い殺し合うのみでございます。」と答えておられました。むごい質問だと痛感しました。満州国皇帝の義妹で、日本の皇族の血縁という立場。四才と七才の二児を連れての逃避行。こういった背景の予備知識を持たない質問だったのでしょう。
 私はこの時、自分の戦争体験をうたう事でその一部でも伝えたいと考えました。沈黙を守って来たのは間違いだったと気付いたのです。・・・