聖書箇所:ヨナ1章
アミタイの子ヨナに次のような主のことばがあった。「立って、あの大きな町ニネベに行き、これに向かって叫べ。彼らの悪がわたしの前に上って来たからだ。」しかしヨナは、主の御顔を避けてタルシシュへのがれようとし、立って、ヨッパに下った。ヨナ1章1-3節
「謎めいた「ヨナ書」を風刺作品として読んでもその細部は説明し尽くせないであろうが、ヨナ物語の他のどんな読み方よりも多くの点を解明するであろう。物語作者がやっつけようとする相手の態度を擬人化したものが主人公なのである。つまり、作品の風刺攻撃のおもな手段がヨナ自身なのである。ヨナ物語はおしゃれな風刺と呼べる文学形式に属する。風刺作家は見事な腕前で自分の物語を話し、そのなかに自分の風刺を完全に具現化している。彼は自分の怒りを露骨に示し、腹にあることをすぐ口にするような男ではない。そうする代わりに彼は、物語中にすっかり身を隠す。それとすぐわかる人物として登場することはない。
風刺の攻撃対象は、神をイスラエルの独占物とし、神の恩寵の普遍性を認めようとしない熱心な国粋主義である。ヨナのいちばんの問題点は神学的と言える。つまり、彼は神の普遍的愛という事実を認めようとしない。それゆえヨナ物語は、神を信じながらも、異邦人を神の怒りの対象と見るだけで、異邦人もまた神の救いに値する罪人であるとは考えないイスラエルへの、矯正手段なのである。」
リーランド・ライケン『聖書の文学』すぐ書房、
1990年、401頁より引用