一
美しい日本が
もっと美しくなるように
私は祈っている
外面的に美しい日本が
内面的にもっと美しくなるように
物質的な日本が
精神的にもっと豊かになるように
二
青くうねりながら白波をたてる
太平洋に
美しく浮かぶ島国 日本
富士山や日本アルプスの連峯が
気高く そびえる国 日本
桜の花が 春の野に
見渡す限り乱れ咲く国 日本
春夏秋冬が
それぞれの美しさを
鮮やかにくりひろげる国 日本
三
人々が 生け花や 茶道や 書道をたしなみ
道ばたで礼儀正しく挨拶をかわし
善意と誠をもって他人と交わる国 日本
わびとさびとの文化を誇り
精根を打ち込んで仕事に励み
恩義には命をもって報いる
美徳の国 日本
私は心から
日本に敬意を表する
四
しかし この日本が
一八九五年から五十年の間
台湾を植民地として治めた
いろんな良いこともあった
鉄道が敷かれ 交通が便利になり
農業や工業がさかんになり
教育が普及し始めた
五
しかし悲劇もあった
台湾の人権と 主体性を主張する人たちが
数多く投獄され 迫害され 殺害された
神社参拝や宮城遙拝が強要され
各家庭に神棚をまつることが命ぜられた
違反するものは 誰彼の区別なく
罰せられ それ故に殉教するものも出た
人間にとって もっとも大事な信仰の自由
宇宙萬物を創造された神を拝む自由
真善美の源を追い求める自由
窮極的な真理に従って真理に生きる自由
それらのものが奪われた
六
教育にも差別待遇があった
日本人の子どもは小学校で
漢民族の子どもは公学校で
先住民の子どもは蕃丁学校で教育を受けた
先住民の文化や 漢民族の文化は唾棄され
日本文化のみが 唯一のものとして尊重された
多様性に富む 世界各地の文化は
等しく尊重されるべきではなかったのか
七
台湾の経済と物産は
日本の官吏と財閥によって牛耳られ
台湾の庶民は貧困な生活を送らねばならなかった
日本政府による 台湾人の皇民化運動は
台湾人から自尊心と固有の文化を奪い
日本的に改姓名しないものは
非国民とあざけられて
皇民のいろんな特権から除外された
しかし 改姓名をし 日本語を語り
高い教育を受けた後でも
結局は二等国民としてあしらわれた
八
世界にその美を誇る日本に生まれ
美しい文化を持ち
美しい伝統を受け継ぐ
日本人によって治められたのに
台湾はなぜこんなにも多くの
悲劇にあわなければならなかったのか
日本の美しさの背後に
何か恐ろしいものがかくされていたのだろうか
私はノーと言いたい 強い衝動にかられる
しかしなお 一つのことだけは否定できない
それは
人間誰しもが持っている
罪 私欲 利己心 というものが
そこにもあったことである
九
日本を責める資格は誰にもない
台湾人もいろんな形で 日本に迷惑をかけ
アジアの諸国や 開発途上国の国々を
傷つけてきた
いかなる民族も 異民族を攻め
残酷にあしらった過去がある
結局 人間は罪深い存在である
自分のみを愛し 自国の利益のみを求め
上のものにこびへつらい
あとから来るものをつきおとし
邪魔するものを消す
それが罪深い私たち人間の姿である
十
人間は萬物の中で最も恐ろしい動物である
毎日数えきれないほどおびただしい数の
牛や魚や鶏 豚 羊などを殺してそれを食べ
動物や植物を犠牲にすることなくしては
生きていけない人間
他人の汗と涙の上にでなければ
自分の幸福を築くことのできない人間
向上すれば 天使のように美しくなるが
堕落すれば地獄の鬼よりも醜悪になる人間
私は自分が
そのような人間の中の
最も醜い一人であることを懺悔する
しかし
イエス・キリストの十字架と復活の故に
私は自分自身に対して失望しない
そして日本に対しても失望しない
いや
日本に対して
特に大きな期待をかけている
十一
私は 日本が必ずより美しくなると信じて
その日の到来を夢見ている
日本人が
天皇に対して忠節を尽くしたように
いや それ以上に
真理に対して忠節を尽くす日がやってくる
その日
日本人は
相対的なものを 絶対化しない
神以外のものを 神としない
そして
真理と善と命の源である唯一の神に
命も富も才能をも
すべてを捧げる
その日
日本人は自国民を愛するのみでなく
アジアの人たちや世界各国の人たちを
兄弟よ 姉妹よと呼んで
温かく抱擁する
そして
貧困や公害 飢餓 失業
病気 無学などに苦しむ人たちに
愛の手を差しのべる
その日
日本人は
人権を剥奪されて
不義と圧制と不平等にもだえ苦しむ人たちの
苦難を共に担う
その日
日本人は
自由と平等とデモクラシーのために
たたかう各国の人たちに
心からの声援を送る
その日
日本人は 正義と平和と人間性の回復に
熱血を注ぐ全世界の人たちと手をとりあって
まっしぐらに前進する
十二
かくして
日本はついに
真理の花 正義の花
信仰の花 希望の花 愛の花が
咲き乱れる国となり
そのかんばしいかおりは
全世界にただよい
その美しい新芽は
人々の傷をいやし
そのすばらしい実は
全人類に
新しい喜び 新しい希望
新しい力を与えるようになる
ああ
その日の到来を待ち望んで
私は今日も熱い祈りを捧げている
(一九九〇年四月十五日復活節の朝)
※この詩は高俊明師(台湾基督長老教会元総幹事)が書かれたものだと記憶しています。
2001年に持たれた東海宣教会議の際に、コピーを頂きました。
The Gospel of Jesus Christ(Shinri Nomachiのホームページ)へ
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野町 真理